【怪談】一寸

2022年09月30日
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Story
 ある日、殺人事件が起こった。

 事件現場は家族で経営する旅館の女子トイレ。
 その個室の中で、女性宿泊客が全身血だらけで息絶えていたという。
 被害者は、全身をとても小さく鋭利な刃物のような物で執拗に切り付けられ
 特に”うなじ”部分には深い傷跡があり、これらの傷による失血死と思われる。

 現場には被害者が犯人と争った形跡が認められるも
 発見時には個室のドアは内側から鍵が掛けられた状態、
 採光・換気用の小窓は数センチ程度しか開かない構造――
 つまり事件現場はほぼ密室であり、捜査は難航を極めた。

 しかし数日後、思わぬ人物が警察署に出頭する。
 旅館で従業員として働く、経営者夫婦の息子だった。
 だが彼が自供したのは殺人ではなく、盗撮について……。
 現場となった女子トイレに盗撮カメラを仕掛けていたらしい。
 無論これも責められるべき犯罪行為であることに変わりはないが
 それよりも、難解事件の”目撃者”が現れたことで関係者は安堵した。

 皆が固唾を飲んで見守る中で再生される盗撮映像。
 まさか個室内にカメラが隠されているとは露も知らず
 鍵を掛け、用を足し始める女性宿泊客。件の被害者だ。
 湧き上がる怒りを禁じ得ない卑劣な犯罪行為の一部始終。
 それでも事件解決の為、無言で、隅々にまで注意を払い続けた。

 そして遂に、映像内に異変が起こる。何か小さなものが、カメラの前を横切った。
 その途端、何かに気付いた女性が慌て出す。その周りを何かが飛び回っている。
 一瞬、(虫か?)とも思ったが、何かが違う。映像内に次々映り込む無数の何かが
 被害者の身体に糸のような物を打ち付け、それを手繰るように飛び回っていたのだ。
 小さな何かが飛び回り掠める度に、被害者の身体に傷が付き次々と出血していく。
 間違いなく、コレらが被害者を死に追いやった犯人であることは、明白であった。
 襲い掛かる何かに抵抗する被害者が、失血によって徐々に緩慢になっていく。
 ――やがて女性は動かなくなり、飛び回っていた何かも映像から姿を消した。

 そこで不意に、何かがカメラを覗き込んで来る。
 映ったのは虫……ではなく人間。とても小さな人間だった。
 皆が我が目を疑い絶句する中で、とても小さな人間は言った。

「駆逐してやる‼ この世から 一匹残らず‼」
 
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犬鍋九十九
Posted by 犬鍋九十九
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